モリワキエンジニアリング

MotoGPプロジェクトが生み出すもの

■MotoGPのあゆみ

MotoGPプロジェクトが生み出すもの

2年間7戦で残されたこと

たった7戦で7ポイントを挙げられるとは、3年前のMotoGP関係者の誰が予想したであろう。しかしモリワキが手に入れたのは世界の賞賛だけはない。

まず、森脇護のマシン造りが間違っていなかったことを確認した。多くの勉強をしながら、30年間取り組んできたマシン造りの方向が間違っていなかったこと、これは大きな自信となった。200数十馬力を前にして、数々の難しさが立ちふさがった。しかし壁を乗り越えながらもMD211VFの基本設計は間違っていなかった。そのオートバイ設計の基本コンセプトはMH80の延長線上にある。

そしてプロジェクトを通して多くのファン、そして理解者に応援された。その理解者の中にはホンダの福井社長、池ノ谷取締役、吉村取締役そしてホンダレーシングの金澤社長を筆頭とするホンダの人々がいた。自らのV5エンジンを使ってモリワキがどんなマシンを作ってくれるのか。純粋に楽しみにしてくれたのだ。レース前に応援に来てくれる人々は本当に楽しそうで、結果に一喜一憂してくれた。

その輪は広がり、スポンサーにも恵まれた。「タイガー魔法瓶」が応援してくれたのはその代表的な例だろう。同社の菊池社長はカメラを手にもてぎに来て、ピットの中でスタッフの一員としてジャックを応援した。初めての得難い経験となった。テクニカルスポンサーのダンロップもニッシンも、このプロジェクトは大きな財産となった。MotoGPという最高峰の世界で開発する難しさを体験し、そのデータはモリワキとの共通財産となった。
モリワキはRC211VのV5エンジンを莫大なレンタル料を払って借りたが、その収穫はレース結果だけではなく、人とのつながりにも現れた。

そしてモリワキのスタッフである。メカニックだけではない。プロジェクトを経験したすべてのモリワキの人々が世界の頂点を経験した。この経験はすべてのモリワキの製品に活かされていくだろう。

MotoGPプロジェクトが生み出すもの

だが森脇護は「悔しかった」と言う。ヨーロッパから帰ってきたときの感想だ。
「向こうでは丘の向こうまで観客が埋まるんです。決勝日だけで観客数が20万人を超えたと言ってました。その観客の一人一人がレースを凄く知っている。レースの関係者もファンを、とくに子供をすごく大事にしているんです。未来のファンであり、選手としてね。日本はすごく遅れていると思いました。なんとかしなければと思ったんです」

今、森脇は日本で新しいレースを立ち上げる準備をしている。そしてGPライダーの松戸直樹を起用して全日本選手権にフル参戦し、2004年に休止した鈴鹿8耐に備える。またモリワキクラブを充実させ、鈴鹿4時間耐久を制覇するライダーを育てている。MotoGPも1ないし2戦出場の予定だ。つまりレースフル回転なのである。

「MD211VFのフレームは、もう作り方が一段落しました。体制さえ整えばMotoGPで十分レースをできる自信があります。ですがエントリーが我々の最終目的ではない。ノウハウをレース界のために使わなければというのが使命です。全日本や地方選手権のレースを盛り上げ、若いライダーやメカニックを育てたい。皆により長くレースを楽しんで欲しい。そのためのお手伝いをしたいんです。この2年間、十分に勉強させてもらいました。それを皆さんに伝えていくのが、2005年からの我々の仕事となります」

モリワキの挑戦は終わっていない。その目標は4耐、8耐、全日本、MotoGPで一貫している。大切なのは挑戦する姿勢と、物事に対する考え方。勝利は後からついてくるものなのだ。